型紙とは着物の文様を染める原版です。柿渋加工の和紙に文様を彫刻したもので、千余年の歴史があります。産地(伊勢の国、現在の鈴鹿市)に由来し「伊勢型紙」と呼ばれ、江戸時代に紀州藩の保護を受け、飛躍的な発展を遂げました。

 日本橋の老舗で見つかった江戸から昭和初期の五千枚にのぼる型紙を世界に紹介するため、紀州ゆかりの地に常設「伊勢型紙美術館」をオープンしました。当館のコレクションは裃(かみしも)、極小小紋、江戸小紋、友禅、幾何学、花鳥風月、森羅万象を文様にした様式美の粋を極めた日本文様の宝庫です。

 幕末にシーボルトなどが浮世絵とともに膨大な数の型紙を持ち帰り、「ジャポニズム」として西洋アートに大きな影響を与えました。現在も重要無形文化財保持団体によって継承されています。日本工芸の極到である意匠芸術は、まさに世界に誇る日本文化遺産です。日本人の季節感と美意識に感動の一言です。江戸人のファッションへの追求に驚かされます。